道の行き止まりには、重厚な扉が立ちふさがっていた。
中央には、これ見よがしに大きな鍵穴が空いている。
よほどひねくれていない限り、今回の目的は
これに合う鍵を見つけ出すことだろう。

行き止まりの隅の地面に狭い穴が空いていて、
階下へ向かう縄ばしごがぶらさがっている。

穴の横の壁には、何やら数字や図形が描かれていた。
それを頭に入れて、縄ばしごを下りる。

下りた先は、小さな正方形の部屋だった。
四つの壁それぞれに同じような扉が付いている。
そして地面には、部屋の中央部分に、太い矢印が絵が描かれていた。



「矢印…ね」
「矢印…だな」

矢印は、扉の一つをまっすぐに指していた。
二人は一瞬顔を見合わせ、矢印の指す扉へと向かう。

扉の先には、同じような部屋があった。
はしごは無いが、地面には同じように矢印が描かれていて、
入った場所から見て、右を向いていた。

その先も同じような部屋で、やはり矢印は右を向いていた。
そして次の部屋も…
矢印は、右を向いていた。
…この矢印が指すのは、最初に入った部屋だ。



「まあ、そう簡単にはいかないわね」

ひとまず、最初の部屋に戻る。

矢印を道標にするのは諦め、とりあえず周囲の状況をつかむことにした。
そしていくつかの部屋を回った後、すぐに、
この空間が無限ループになっていることに気づいた。

最初の矢印の二部屋先は、元のはしごの部屋だった。
念のためはしごを上ってみたが、
やはりさっきの、扉のある行き止まりだ。

つまりは、最初に回った四部屋を単位として、
規則正しくループしていることになる。



とりあえず迷うことはないと分かり、少し足を速めて、
部屋から部屋へと歩き始めた。

ふわりとした物が、俺の手に触れた。
ジュナの手だった。

「…ジュナ?」
「ちょっと! 急に速く歩かないでよ。はぐれたらどうするの!」
「え?」
「…だって、ここ無限ループになってるでしょ。
 同じ部屋に戻っても、そこが本当に同じ場所なのか分からないじゃない。
 もし同じ部屋にいるのに、お互いの姿が見えなかったりしたら
 気味悪いじゃない」

笑い飛ばそうかと思ったが、ふと言葉につまる。
今の場合は、いつでも出口があるからいいけれど、
もし、出口の分からない無限ループをさまようはめになったら…
それは恐怖を飛び越えて狂気の沙汰だ。

そんなことを微塵も考えなかったのは、
俺も無意識のうちに心強く思っていたからだろう。
一人ではなく、二人だということに。

「…分かったよ。どうせ闇雲に動き回っても意味無いし、
 腰でも下ろしてじっくり考えよう」
「分かればいいのよ。…って、いつまで手握ってるの!」

握ってきたのは、そっちの方なのに。


「ここに下りてくる前に、壁に何か描いてあったよね?」
「うん。…ちょっと待って。確か、こうだ」



「あ、確かにこんな感じだったかも」
「数字と、矢印と、鍵のマークか…」
「0から始まって、10の所で鍵が手に入るって感じかしら」
「うーん… ん? 待てよ…この0の所の…
 えっとそれで… こうだから…
 …あ!そうか、分かったぞ!」
「えっ? どういうこと!?」


・ジュナにヒントを出す
・ジュナに答えを教える
・黙って鍵をゲットする